2006年8月 6日アーカイブ

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 飯能市の大通り商店街は昔、近隣の村から産物を持ち寄って市の立ったところ。いうなれば近隣の村にとってはハレの日に訪れるところとでも言えそうである。そこに古めかしい切り妻造りの仕舞た屋風の建物をふたつ並べてあるのが「住田屋」である。その外見は古く、換気扇のファンの上には竈かなにかしらの煙突が見える。どうも市の立っていたときには売り買いが終わり在所に帰る前にこんな食堂で腹ごしらえをしていたのではないだろうか?

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 その引き戸を開けると、中は薄暗く、よく見ると祭衆も食事中であり満席。引き返そうとしたら4人がけの席に座っていたオバサンが、「合い席でいいならどうぞ」と言ってくれた。店は入って正面にテーブルが並び、その椅子机ともにいたって安物だ。そして漸次、薄暗さに慣れてくると奥には壁があり、窓もなにもない。右手に厨房がある。そのガラスの仕切が古くがたついている。見通せる厨房もなんだか明治や江戸を思わせる。
 メニューはカレーライスや焼き肉定食もある。が、やはり中華の品が多い。そして店内を見回して来店する人のことごとくが食べているが「つけめん500円」である。しかも麺の丼からの盛り上がり方からすると「大盛り600円」だろうか? 大に麺が、小の丼につゆが入っている。これどこかで見たような、と、考えてみると近所にあるうどんの「古久や」の「盛りうどん」と見た目がそっくりだ。違いは麺の太さ。
 一緒に飯能に出かけた姫は迷わず「つけめん」、ボクは好奇心からラーメンを注文する。この日はお祭りなのであり、姫はここに来るまでにチョコバナナ、あんず飴、かき氷などを食べている。当然、「つけめん」は半分しか食べられないだろうという計算も働く。注文を聞きに来た女性がスイングドアから出てきて、また厨房に消える。木の軽そうな戸が何度も何度もばたんばたんする。
 ほどなく前に座ったオバサンに焼き肉定食がやってきた。
「この店はね。飯能でもいちばん古いくらいの店だね。来る人はみんなつけめんかラーメンを食べていくね」
 姫と二人で店内を見回しているとオバサンが教えてくれる。
 そして「つけめん」が姫の前にくる。姫は早速、驚くほどの早さでめんをすすっている。

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「うまいの? 全部食べちゃいそう?」
 うんうんとうなずいているので、ちょっと味見する。これはなかなかいい味わいだ。麺は中華麺ではあるが鹹水などをほとんど使っていないストレートで個性のないものだ。むしろうまいのはつゆである。これは鶏ガラスープに和風の出汁が加わっているようだ。程良い塩分濃度、そして甘味。豚肉となるとが入っているのも「埼玉風盛りうどん」にそっくりである。
 そしてやっとラーメンが到来する。麺はつけめんと同じもの。そこになると、チャーシュー、めんまに海苔にネギが加わる。スープはいたって軽い鶏ガラ風味、そして微かに魚などから来るイノシンの旨味。これも毎日食べても飽きない普段着のラーメン。店が混んでいるわけは当然のうまさにある。

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<p> さて、姫はとうとう「つけめん」を制覇してしまった。かねがねよく食べる娘だと思っていたが、改めてうまいものには目がないのが思い知らされる。<br />
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<p>住田屋 埼玉県飯能市仲町21-23<br /><a href=http://copost.hp.infoseek.co.jp/o-sumitaya.htmlg" width="150" height="98" border="0" />

 まあ、「下仁田納豆」というのは納豆界では有名な存在であるようだ。それが証拠にデパートなどでたびたびお目にかかる。それほどこれ見よがしにあると、手が遠のくのがボクの気性。
 でも食べたらうまかったのだ。これはデパートのバイヤーがわざわざ納入しているのだから当たり前だろうか? 豆の味わいがとてもいいし、甘味がある。タレも辛子もなかったっはずだけど、ボクはあまり添付の辛子もタレも使わないので忘れてしまった。
 そう言えば群馬にはいい納豆が目白押しである。この群馬でも抜きいん出ているんだろう。

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下仁田納豆 
http://homepage3.nifty.com/NATTOU/

 立ち食いそばでは都内でも屈指の店である。その立川駅下り線ホームのが良かったのだが、なぜか今はなくなってしまった。このあとに明らかにJRとのコネクションがあるだろう、つまらない「あじさい」、「小竹林」なんかが来ると困るんだが大丈夫だろうね。
 さて、「奥多摩そば」で夏に注文するのが、「冷やしかけ」300円、その他の季節は「おでんそば」380円である。今回の画像はスタンダードな薩摩揚げであるが、厚揚げ、卵にすることもできて、個人的には卵がすき。このゆで卵を箸で突きこわしながら、最後に汁と一緒にすするのが何とも言えずいい。
 このような食べ方が出来るのは出汁の味がいいからだ。たぶんしっかりさば節かなんかでとっていて、ついつい最後まで飲み干してしまううまさである。また麺もとりたてていいとというものではないが、無難なものを使っている。立川に来ていい昼飯屋が見つからなかったらお勧めの店であるし、途中下車して食っても満足できるはずである。

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「コーヒーと洋食の店」とあるので「入るべきかやめるべきか」考えてしまった。外見からするととても「入りたい」店なのだ。内海隆一郎の小説にでも出てきそうな、こぎれいで情緒に富んだ店の趣。しかもかなり空き腹である。これは近年昼食をほとんど食べなくなったせいだ。食べても軽く一膳、しかもお茶漬けだけだったり、お菓子でごまかしたり。
 そんな空腹で森下町交差点そばの「鍵」の前に立っているのだ。結局空腹に押されて店内に入る。テレビの前の席に老人が座っていて、入るや否や席を立ち、奥に消えた。どうもこの店の方らしい。そしてその奥さんだろうか出てきてメニューと水、おしぼりを置く。店内はチョコレート色の腰板、そしてテーブル、テーブルの表が白いだけで壁は沈んだ濃いベージュである。その壁にはメニューも、ポスターも貼っていない。なんとも清潔で静かな店内である。
 メニューを見るとハンバーグやカツ、オムライスなど。お勧めを聞くとハンバーグであるというので、それを注文。ライスは別であり、ハンバーグとビールもいいな。でも考えた末にビールではなくライスを注文する。合計850円。学生街から高額な都営地下鉄に乗り、森下町で下りる。学生街ならハンバーグライスが650円で食べられるが、下町にきて850円というのは、ちょっと贅沢なのだ、貧乏なオヤジには。でもでも、この「鍵」での一時がよかった。
 後からご婦人が来店してきた。この女性の座った席が奥に近いところ。100円玉をコロコロと置くと、この屋の老婦人が自然と前に座って、旅行や会の話を始めた。そしてコーヒーが来て。またご婦人方は話し始める。その話しぶりが、とてもいいのだ。浅草などでやたらに目立つオバサンに出くわし、堂々と大声で個人的、あまりに個人的な話をしているのに出くわす、また学生街では若者がそのようなことをしでかす。でも、ここでの話はつましく、しかも自然でふたりのご婦人、そして店主らしき老人も含めて適度な友好が見られてとてもいい。こんな些細なことから、ついつい森下町にたった一人で住んでみたくなる。いいな森下町とも思う。
 まあ、そんな一時があってハンバーグが到着。これがとても端正な昔ながらのもの。ハンバーグ自体は平凡だが、そのソースがとてもうまい。個人的には上質のドミグラスは味気なくもの足りないと思っているが、ここのはそんなもんではなく、ちょっと酸味があってしかも明確な味わい。ご飯に合う。
 食べ終わるのはあっという間だった。時計を見てコーヒーで長居したいのを我慢する。そして近所にスーパーがないか聞くと、「フジマート」までの道を懇切丁寧に教えてくれた。本当にいい気分で歩く、森下町であった。

「鍵」は新大橋通、馬肉の「みの屋」のそばにある。

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 中央沿線には、高円寺、阿佐ヶ谷、荻窪、西荻窪と魅力的な街が続いている。どの街にも古本屋、活気のある商店街、また曰くありげな個性的な喫茶店などがある。中でも比較的足が向かないのが阿佐ヶ谷である。これは古本屋がないだけのことで、すずらん通りなどは魅力的。
 そのすずらん通りを歩いていてあまりの空腹感から飛び込んだのが『蘭花』。この店、驚いたことに店の横で鯛焼き、たこ焼きを売っていて、たぶん腹ぺこじゃなければとても入る気にならなかったろう。
 その店内にはオバチャンがひとり。まだ店を開けたばかりの夕方5時過ぎのことである。ラーメンは食べたいと思うものの、あまりに腹が減りすぎて「飯」が食いたいという欲求が強すぎる。そこにABCの定食。あんまり品揃えなど見ないでBにする。これはざく切りキャベツいっぱいの焼き肉、たくわん2切れ、オマケのコロッケ、中華スープ、ご飯で750円也である。ご飯はこれで並盛り。大盛りにしたら凄いだろうな。
 この焼き肉、やや脂が薄く、オヤジ向きである。そして味つけは甘口。この甘口がご飯にあう。またざく切りキャベツもソースをザブリと注いで合いの手によろし。コロッケ、たくわんはありきたりながら中華スープはなかなかうまい。これならラーメンもうまいだろう。阿佐ヶ谷『蘭花』腹ぺこオヤジにありがたき店である。

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杉並区阿佐谷南1の13の4

 日高市の農産物直売所で見つけたもの。これがまさに真四角の木綿豆腐。大きい、重い、そして安いの三拍子揃った優れものの普通の豆腐。この日高市というのは「高麗」すなわち奈良時代の高麗郡の置かれたところ。当然、飯能も高麗郡の一部なのだ。高麗郡というのは関東周辺の7カ国から高麗人(朝鮮渡来人)を集めてきて一郡としたところなのだ。それと豆腐が真四角であるのが関係あるんだろうか? ないだろうな?

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むつみや食品 日高市大字台122番地1

 埼玉県の豆腐は真四角か長方形か? これは問題だぞ? そして今回は埼玉県にあって長方形の豆腐を紹介する。
 東松山の「江野豆腐店」を見つけたのはさんざん市内を自転車で走ったあとであった。この東松山駅周辺であるがなんにもない。夕方なら名物の焼きトンもあるだろうけど、駅周辺の寂しいこと。
 あまりの無駄歩き振りにうまそうな豆腐屋を見つけてときにはほっとしたのだ。それでいそいそと木綿豆腐と湯葉を買ってくる。これはなかなかうまい豆腐である。大豆の香りも高く、また甘味も感じられる。湯葉もまあまあのラインを確保している。
 でもどうして真四角じゃないんだろう。長方形と言うには控えめなのだが、やはり「長方形」なのである、真四角ではない。

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江野豆腐店
http://www.saitama-j.or.jp/~syougyou/genki/shop/w014_tohu.html

 この店に初めて入ったのは大学に入学してまもなく。と言うことはすでに30年も前。最初は、値段からいってなかなかおいそれとは食べにいけなくて、ちょっと贅沢な店だなといった存在であった。
 その頃から長い間友達と飯を食いに行くに交差点そばの「あの食堂」とか「おやじの店」と呼んでいて屋号を知らなかった。それが数年おいて、また神保町暮らしをするようになって、ときどき夕食を食べに行くようになった。当時通っていたのが岩波書店そばの「末広」、「亀半」などであるが、この店のみが生き残っていて今では貴重で懐かしい店だ。

 また通うようになって、改めて屋号を聞いた。それがかれこれ20年以上前のこと。このとき初めてそのオヤジと口を利いたことになる。その無骨なオヤジが「おおみや」だと言った。それが漢字にすると「近江屋」だとわかったのはまたまたかなり後のこと。すなわち屋号などどうでもよかったのだ。それから仲間と夕食をとるために、遅れてくるひとりのためにメモを残した。「近江屋にいってるよ」と書くと「や」は平仮名じゃなかったかな? と合方が言う。まあ、これもどうでもいいか?

 ここの名物が竹の子ご飯、実をいうと一度も注文していない。我ながらガンコに、基本とするのはサバ焼き。これに懐具合と相談してごま和え、きんぴら(ともに180円)、納豆(130円)、冷や奴などを追加する。これで700円から800円となる。ちょっと贅沢をして肉豆腐(200円だったか250円だたか)を追加することも可であるし、玉子焼きというのもあり得る。しらすおろし、なめこおろし、焼き海苔、大根の煮物もあった。それにサバを真ん中に持ってこないでサケやサンマでもいいのだ。とにかくボクは「近江や」では白飯にこだわっている。

 魚は客の注文を受けて焼き始める。確か昔はガス台に魚焼き器で焼いていた。それが今は天火の焼き台。この魚焼き器の変換期に店自体も改築している。改築したばかりのときにはオヤジがなんども、この焼き台に悪態をついていたのが思い出せる。
「せっかく高い金だしたのに、なかなか焼けやしない。バカ野郎」
 この光景がいかにも滑稽であったな。

 いつも注文するのはサバと言うがいわゆる「文化干し」である。これをこんがり焼いてたっぷりの大根おろし。初めて入ったときにサバ自体に醤油をかけて、訳知り顔の同級生に「大根おろしにかけろよ」と言われたっけな。この焼きたてのサバのうまいこと。つい食べ過ぎておかずが足りなくなるので副菜のごま和えやきんぴらが重要になるのだ。みそ汁もあつあつ、そして少し塩辛い。腹減りで「近江や」に入って、ご飯をがっしがっしとかき込むときの幸せなこと、だれかわかってくれないだろうか?

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「店を開いて40年だ」と頑固そうなオヤジは言った。こちらは神保町暮らしもとびとびながら30年ほど。仕事場は逆方向ながら、「たまには来ないとダメだな」と来るたびに思い。また2,3年経ってから「近江や」ののれんをくぐるのだ。

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手前が「近江や」、一軒あけて右が神保町名物半ちゃんラーメンの「さぶちゃん」。その先が白山通りで通りに面して「グラン」という洋食屋がある。これ総て兄弟なのだ。そう言えば「グラン」が開いていなかった。どうしたのだろう?

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