明治末、大正期を経て戦後に爆発的に増えたのがいわゆる「大衆食堂」であることは前にも書いた。詳しいことは『大衆食堂の研究』(三一書房 遠藤哲夫)、エンテツさんにお任せするとして。その「大衆食堂」に三本柱がある。それは煮つけやお浸しなどの家庭料理の延長のもの。そして「中華料理」と「洋食」である。この両者ともに中国やフランスやイギリスから影響は受けているけれどもまったくの日本料理であることは覚えておいて欲しい。
すなわち「大衆食堂」というのは「家庭料理(もしくは江戸時代からある煮売り屋など)」と海外の影響を受けて明らかに日本で生まれた「日本食」である「中華料理」と「洋食」の総合体なのだ。これが近年どんどん姿を消して行っている。生物の世界なら「レッドデータブックス」に載せたいくらいだ。
そこで今は少なくなった「大衆食堂」を探すとして、どこにあるかととりとめもなく街を歩く、まず見つかるのはそのものずばり「大衆食堂」、もしくは「食堂」と明記されたもの。そして「中華料理店」と「洋食屋」も加わってくる。たぶん分類学的には「大衆食堂」なのだけれど店主などの得意な料理のせいで、もしくはもとを正せば中華専門店や洋食専門店から「大衆食堂」に変化したもの。これが例えば「中華料理店」だと明記されていたとして実は「大衆食堂」なのだと判断する目安はラーメン、タンメンからレバニラ炒めに炒飯という「中華メニュー」があるのに加えてオムライスやカレーライス、カツラライスなどの「洋食メニュー」が混在している点が重要なのである。
と考えているときに見つけたのが八王子市八幡町の「中華料理 一番」である。この店前述の定義からして「中華料理店」ではなくて「大衆食堂」に分類されると思われる。ここには定番的中華メニューに加えて、カレーライス、チキンライスにカツライス、カツ丼まである。この大発見に「中華料理」と銘打った店に入り、「大衆食堂」らしいオムライス750円を注文してみる。そこに現れたのは少々ヘタクソだが好感の持てるオムライス。のっている楕円の皿にはときにはレバニラ炒めなどものるんだろう。そして中華スープ。味わいを書く気はさらさらにないが、中華スープの味わいからしてラーメンはいけそうである。
またついでに書くと八王子市街横山町、八日町、八幡町とつづく甲州街道、開発が遅れているせいか古い呉服店(松任谷由実の「荒井呉服店」も健在)や漆器店、和紙店、八百屋に肉屋など散歩していてなかなか楽しいのである。ボクもまた猛暑が去れば自転車での街巡りを再開するつもりだ。
店頭にサンプルが置いてあるウインドウがある。このサンプルを置く店が少なくなっている