定食・食堂・料理屋: 2006年12月アーカイブ

 暮れと言うことで知人たちと明治4年創業、湯島の老舗「江知勝」ですき焼きの鍋を囲んだ。湯島天神そば、ボクとしても大好きな湯島で老舗のすき焼きを味わうのだと期待に胸膨らませて千代田線湯島の駅から歩く。このあたりは湯島から本郷に向かうなかなか楽しい道筋なのだ。
 そして知人と歓談。すでに刺身などの料理は並び、後はすき焼きのくるの待つばかり。まずは牛肉の煮物を一口。これが甘ーい。甘くて耐えられない。まさか本気でこのような料理を作ったのだろうか? もしくは明治時代、まだまだ砂糖のお高い頃を偲んで作られたものか。そして刺身と言う名の在り来たりな添え物。もずくを寄せた酢の物。
 そこにしらたき、春菊、ネギ、焼き豆腐、霜降りの高級そうな肉が盛られた鍋が到着する。そこに見えるのはしたじだろう。そして煮えて来るなり、手元を見ると生卵を既に割り入れられてしまっている小鉢しかない。ボクはすき焼きに生卵を使うのは嫌いなのだ。という間もなく肉は煮えすぎて来ている。
 仕方なく一切れ口に運んで、これがまた信じられぬほどに甘ーーい。ほとんど甘味が刺すくらいに刺し来て肉の味わいがない。これに呆然としていると仲居さんが勝手に次の肉を入れていく。これでは酒で甘味を洗い流す暇もない。
 強烈に甘い牛肉の大きすぎる一切れが、それだけで胃袋に被さってくる。すぐに胃袋は無抵抗に白旗を揚げて降参してしまった。まわりでもこの甘すぎるすき焼きの攻撃に明らかに降参降参と言っているのが見えてくる。それでも仲居は肉を入れるのをやめぬ。
「肉に赤い部分が残っているくらいが食べ頃です」
 バカ言うんじゃないよ。こんな味付けでは少しも牛肉のうまさを楽しめない。老舗恐るべし、お客の食べる速度を無視、また好みも省みない。
 ワシはこんなすき焼きは二度と食べたくないぞ! その上、トドメはデザート?のミカン。日本酒の後にミカンが食えるか!
 ちなみに明治4年と言えば文明開化とともに入り込んできた牛肉がまだ普及する前。翌明治5年、政府は肉食の普及のために明治天皇に実際に牛肉を食べることで世に範を示してさえいる。そんな文明開化の牛鍋の味わいはいかがなものだったのだろう。間違いなく言えることは「江知勝」ではそんな粗野で実質的な肉の味わいは楽しめない。

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 土曜日は疲れ果てて、なんとか午前中はサイトの改訂や雑用をこなしたが、午後になってどっと息苦しい気分になる。これは頭が疲れているのであって、身体は疲労せずというアンバランスなところからくる苦しさなのである。そこで太郎のゲームソフトを買うというのにつきあい八王子まで自転車をこぐ。
 時刻は2時前、腹ぺこペコで浅川を超えて、中央線のガードをくぐり抜け、子安までたどり着く。まず目差すのは『いち川食堂 本店』である。向こうに見えるのは八王子南口。『いち川食堂』はこの辺になるはず。見回すと真っ正面に「いち川食堂」とある。ところがこれが分店。本店の場所を聞いて、すぐに店は見つかった。
 面白いのは南口の通りから斜めに入り込んだ路地。その路地にあるのはカンバンだけ。店は小さな川沿いに奥まっている。しかも店の入り口が雑然としていてとても食堂とは思えないのだ。そして引き戸を開けると市場での顔見知りが「いらしゃい」と優しい笑顔で迎えてくれる。
 太郎もボクも既に胃の中にも腸にすら何もない状態にある。店を見回すとそこにオムライスだチキンライス、カレーライスにカツ丼などの文字が飛び込んでくる。見ていてクラクラと目眩がする。


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 注文したのはオムライス550円、レバニラライス550円、餃子300円、ラーメン450円。太郎が「足りないかも知れない」というのを大人の理性がとめる。
 まずラーメンが来た。むんずと太郎がラーメンを引き寄せて幾たびもズズとすする。堪えきれなくなり、ボクも一すすり。これがいたって平凡なものだが、味がいいのだ。残念なのは後述する「さやぴぃさん」と同じく麺だけ。そしてレバニラ炒め、オムライス、餃子が来る。これをあっという間に片づけていく。レバニラ炒めの塩加減がいい。惜しむらくはもっとニラが欲しいのだが550円でこれだけうまければ納得。また太郎がオムライスに熱中している。
 いっきに平らげて麦茶のお代わり。ああ、久しぶりに正統派の食堂で腹一杯食べた。幸せだ!
「父ちゃん、こんな店、ウチの近くにあったらいいのに。今度はカツ丼600円食いにこようよ」
 太郎、大丈夫だ。この店なら一人三品頼んでも父ちゃんは払えそうだ。今度はカツ丼、ラーメンコースで食い倒れてやる。

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『いち川食堂 本店 東京都八王子市子安町1-9-1
いち川のラーメンなどの味わいに関しては
「さやぴぃのラーメンデータベース」を見てくれ
http://www.geocities.jp/sayapie3838/database.htm

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