たまたま神保町で打合せをしているとき、居合わせた女性が「青森県のラーメンってなんでしょうね?」と聞くので、「青森なら煮干し味じゃないでしょうか? 高いけど焼き干しというのもあってさっぱりした味わいですね」と青森ラーメンで話が盛り上がった。
暮れなずむ白山通り、最近、神保町交差点から水道橋にかけてやたらにチェーン店が乱立する。教えられた通りに通りの向こうにマツモトキヨシを見ながら水道橋方面に歩く。やっと見つけた「青森のラーメン店」というのが「豚そば屋 けっぱれ」であった。一瞬、どう見ても青森らしさがなく、通り過ぎてしまった。でも「けっぱれ」だよな。山口瞳ファンなら必ずわかるのだけれど、これは青森弁で「がんばれ」の意味である。
仕方ないので入ってみると典型的やりすぎの内装だ。イラストというか絵と手書き文字というのがわざとらしく、「つくられた」という雰囲気。その雰囲気を和らげているのが店員さんのダサイ対応ブリ。最近、どうもこの作りすぎの店が多くて困る。気色悪い。だいたい人気のあるラーメン屋ほど内装などは普通ではないだろうか。
メニューを見るともっとも青森らしいと思っている、煮干し風味の醤油ラーメンがなく、それにあたるのが「コク醤油680円」であるらしい。あとは味噌や塩、味噌カレーなんてのもある。よく見ると「青森ねぶた漬け丼」というユニークなものもあり、好奇心が湧くが、やってきたラーメンの背脂が全面に張って(氷が張るように)いるのを見て諦める。
見たところスープは乳白色である。一口すすると、そこにあるのは、みちのく青森の味わいではなく、完全にニューウエーブの作り出すもの。背脂の甘味と醤油と塩、スープは明らかに豚骨にほんの少し煮干しかなにかのアミノ酸も感じる。今、あちこちにある「花月」に似ている。でも「青森か!」と思ってはいるとがっかりするだろう。ボクなどは一日机に向かっているわけで、汗をかくような仕事ではなく、しかも今年は暖冬だ。とてもこのような濃厚で「旨い」ラーメンを食べたいとは思わない。
またこのように内装や外装に凝るくらいなら、ラーメンの値段をもっと下げるべきだ。基本が680円は高いな。
豚そば屋 けっぱれ 東京都千代田区神田神保町1-54-3 原田ビル1F