秋葉原の喧噪から昭和通を渡ると、とたんに寂しい、そして哀愁漂う街に変わる。ボクなどのオヤジはとても秋葉原のやかましさのなかでは長く息をしてはいられない。そして息継ぎをしに昭和通を渡ってしまうかのようである。そんな薄暗い神田和泉町昭和通沿いに見つけた店。立ち食いではなく、椅子席なのだが、明らかに店のあり方は「立ち食い」のもの。立ち寄った時間が遅く、天ぷらなどで売り切れが多い。疲れ果てて、しかも昼食抜きで立ち飲みでいっぱいという、ちょっとメチャクチャな無駄歩きの果てのいっぱいのそば。
その汁は柔らかく、甘味はほどほど、なかなかいい味わいである。麺もそばの味わいがして粉っぽさがない。そして竹輪天にしても店仕舞いに近いせいか冷たく、ちょっと持てあましてしまったが、きっと揚げたてならうまいに違いない。ということで平均点以上の味わいであった。
立ち食いそば・うどん: 2006年9月アーカイブ
荒川区町屋は都営荒川線、京成、そして地下鉄と3つの鉄道が交差する。それでは賑やかなところか? というと、ちょっと違うような不思議な街である。北千住の足立市場の帰り道、町屋の駅周辺で立ち食いそばの店を探してやっと見つけたのが「八起」である。町屋の駅周辺は今時のおバカな設計者がデザインしたとおぼしき無味乾なビルがどんどん浸食してしまっている。そして昔ながらの街並みがこれまたどんどん消えていっているのだ。「八起」はそんなビル群の一角に張り付いている。
入って右が食券、左にカウンターがある。厨房にはなかになかなか味のある、にこやかなオバチャンたちが陣取ってボクが食券を買うのを視線で追っているのを感じる。
券売機で食券を買うのは本当に苦手である。だいたいボタンを押した途端に失敗したなと思う。でもこの店には天ぷらそば・うどんに「お好み」というのがあるのだ。これはとても親切だ。360円だったかな、これを選択するとカウンターで好きな天ぷらを選べるのだ。カウンターのケースにはかき揚げ、春菊や竹輪てんなどがあり、ちょっと考えて見栄えの悪いイカげそのかき揚げにする。このかき揚げは自家製のようだ。
一軒志野風の丼に入って出てきたものは。出汁はやや甘めならが、旨味もあり、まずくはない。そして意外にさっぱりしている。残念ながらうどんは普通というか、いかにも立ち食いですといった腰のない在り来たりのもの。そこに見栄えの悪いいかげそのかき揚げがのっているのだが、なかなかこれがうまい。
食器をカウンターに戻すと下町風のオバチャンが枯れた笑顔を作ってくれた。ちょっとこれが恐いようでもあるが「八起」はときどき立ち寄ってもいいかな? という店である。
●コメントをいただいたアバタノオジサンには申し訳ないが「お魚三昧日記」から移動しました
亀戸無駄歩きは驟雨沛然、そして曇り空、そして驟雨沛然、まったく全身ずぶ濡れになってしまって、もう歩けないと思ったら踏切があった。そして遮断機が下りて左手から来たのが曳舟行き。踏切を渡り、もうこれ以上歩いてもなにもないらしいと、振り返ったところに立ち食いそば屋を発見した。
しかし、その店構えのはなはだしく殺風景なこと。真冬にここを通ったら思わず避けて通りたくなるようではないか? そして引き戸を開けると、くの字型のカウンター、奥は座敷、そしてカウンターの中にはとても愛想のいいオバハンが立っていた。傘を置くと、「まだ雨が降っていますか?」と聞いてくる。その声がなんとも軟らかい。ここで天ぷらそばをお願いする。ゆったりした動作で出来上がった天ぷらそば、汁の色合いは黒く、かき揚げは自家製なのか市販のものなのかはわからない。そしてそばはやや粉っぽく、つゆは濃くて旨味に欠ける。いかにも立ち食いですといったものだが、まずいわけではない。
「ここはどうして水神そばって言うんですか」
「あれ、そこに水神様、お客さん、ここは初めてですか」
「そうなんです。亀戸駅から迷ってこちらに来てしまって」
「そこに駅があるんですが駅名も水神って言うんですよ」
そばの脇に置かれたキュウリの漬物がうまい。
「これは私が作ったんです」
「うまいですね」
平凡なそばだが、この5分ほどの時間がよかったのである。外に出ると雨はあがっていた。
無駄歩きで半蔵門線水天宮前で箱崎方面を霊岸島に渡る。今回の無駄歩きはただただ寛永に出来た霊岸島に言ってみたかっただけなので、ビルだらけの島で空腹感を覚えてたまたま見つけたのが「がんぎ」であるだけだ。
自動ではない引き戸を開けると自動販売機がある。肌寒いし、腹が減っていたので天ぷらそばにするべく探したが見つからない。それで「もり・かけ」というのと「イカ天」の券を買う。それをカウンターにだすと出てきたのが所謂立ち食いの「天ぷらそば」ではなく、イカ天ののったざるそばであった。
店内を見るとここは立ち飲みも出来るらしく、冷や酒400円を追加する。この冷や酒がうまい。新潟の酒だと言うが銘柄を忘れたのが残念。そしてそばなのだが、新潟県十日町市ならではのフノリの入ったもの。そばのつなぎではトロロアオイやオヤマボクチなどがあるがフノリのものがいちばん苦手なのだ。フノリは海藻の香りの強いもので、どうしてもそばの香りや味わいを殺してしまう。また、つけて食べるには表面が海藻の食物繊維でコーティングされて滑らかすぎる。でもまあよくできた麺ではないか、そしてつけ汁だが、これもなかなかいい感じなのだ。カツオ節の風味もあるし、辛口なのがいい。そばと天ぷらで400円前後、冷や酒400円で硬質な都会からいっとき逃れていられるなら安いものだと、ちょっと感動した。
日本橋室町は大正時代まで魚河岸のあったところ。その名残が所々に見られる。そんな路地裏にひっそりあるのが『吉そば』である。店構えはいたって地味。紺の暖簾が下がるだけ。
ここのそばがなかなかうまい。天ぷらの種類も多く、今回はレンコン。立ち食いそばでレンコンの天ぷらというのも珍しく、また味もいいのでビックリ。そばはやや太目、それがさっぱりとした中にも甘味と旨味しょうゆの味わいが調和した汁ととても合っている。銀座、代々木など9店舗あるチェーン店ではあるが、これは小諸そばにはない魅力がある。こんどはうどんを食ってみよ!