雨の中、富士吉田駅の近くで山宿りするように飛び込んだのが「研考練」である。駅から本通りに向かう坂道は駐車場や公園はあるものの商店はなく、そこに忽然と仕舞た屋風の建物、暖簾がかかって初めて「うどん屋」であることがわかる。あまりに変わった店名に一瞬足が止まったが、店の構えはいたってありふれた田舎の食堂なのである。入ると左手に小上がり、テーブル席があり、入り口の横が厨房になっている。
店内の雰囲気はあくまで食堂、どこにも観光的なものはない。わざわざ富士吉田に来て入るような店とは思えないのであるが、品書きをみてとりあえず、「肉うどん」400円に決める。あとあと調べてみるとここには「揚げ出しうどん」という名物があったようなのだが、そんな特別な書き方はされていなかった。これは残念。
そして出てきたのがまことにボク好みの懐かしいうどんなのである。汁はカツオ節だろうか、やや甘口ながらしっかりとした塩辛さを感じる。うどんの上には牛肉とお麩と青ネギ。青ネギは明らかに九条ネギではなくわけぎである。考えてみると富士吉田のネギは白ネギなのだろうか、わけぎなのだろうか? そして、麺はやや平たく、腰がある。
なかなか汁がうまくて「いっぱいのうどん」としていい味わいである。例えば関西や四国のうどんだと油揚げや竹輪が具材となるのが、ここでは乾燥麩なのも面白い。
あっという間に食べ終わったときに、窓の外から激しい雨の音が聞こえてきた。店のオバサンが洗濯物を取り込みに走る。そして、どうしても傘を手に入れなくては身動きが出来ないので「コンビニは近くにありますか」と聞くとないという。そんな話のついでに「うどんを食べに来た」ともらした。すると先客で来ていたオバサン達が「吉田のうどんはキャベツがいっぱいはいっとるね」と言う。するとここのは典型的なものではない?
それで「キャベツを具に使う」ということで市役所の「農林課」、「歴史民俗博物館」に電話で問い合わせた。お話を聞いた堀内さんによると、高原抑制栽培のキャベツをこの地域で作り始めたのは新しく、うどんの具にキャベツというのも古いものではないのではないか。古くは青菜などを利用していたらしい。またうどんも外食での一品ではなく月江寺周辺での機産業の合間に自家製に作っていたのが始まりであるようだ。
外は大雨である。「研考練」のオバサンに傘をお借りした。「よかったら持っていっていいよ」と言われて外に出る。店先まで送り出してくれて「晴れてたら富士山が見えたのに」と黒雲の果てを見る。結局雨は止みもせず、傘を頂いてきてしまった。オバサンありがとう。
研考練 山梨県富士吉田市上吉田2-6-21
●詳しくは富士吉田市の「吉田うどん」へ
http://www.city.fujiyoshida.yamanashi.jp/forms/info/info.aspx?info_id=362